人知れぬ暗闇の中、彼は目覚める。
いつもの景色だ。
僕は、死ぬ為に生きている。
自分の運命が決まっている事も、この景色が動かない事も知っている。
どう足掻いても、変わらない。何故だ。
声が、聞こえる。
今まで、こんな感情は知らなかった。僕を突き動かすこの感情に呼応する様に、声が響く。
「君の見た景色を、君の聞いた音を、君の触れた感情を、僕に届けて欲しい。」
彼は駆け出した。暗闇を指す光の方向へ。
何故かは分からないが、足は動き出す。寂しそうな、求めるような声のする方向へ。
僕は、何者だ。今まで生きてきて、ここまで疑問を抱いた事は無かった。
記憶にあるのは、意味の無い数字と、赤い印。
彼は、他人と出会う。感情へ触れる。
自らを、「イルイ」と名乗った。